備前福岡の郷土料理
「どどめせ」
どどめせは、中世鎌倉時代から伝わる、備前福岡(一文字のあるところ)の郷土料理です。炊き込みご飯に酢を混ぜた煮込み寿司で、備前ばら寿司の元祖といわれています。歴史教科書にも載る中世福岡の市で生まれ、その賑わいとともに各地に広まっていった中世ロマンの味。素朴な味の中に独特のまろやかな風味が生きています。
ちらし寿司の元祖?!
まだ、日本で食酢が作られる前の鎌倉時代末期(食酢が生まれたのは、室町時代)まで時代はさかのぼります。
「福岡の市」(現在の岡山県瀬戸内市長船町福岡)の渡し場にあっためし屋での話です。
そこで、高瀬舟の船頭たち用に毎日炊き込みご飯を作っていたところ、ある日、酒に酔った武士がそれをやっかみ、酸っぱくなったどぶろく(にごり酒)をそれを炊く釜の中にひっかけて帰った。昼食時、何も知らずに食べた船頭たちは、いつもと違う味に「うめえ、うめえ」と喜んで食べたのがそもそもの始まり。
以来、炊き込みご飯に酸っぱくなったどぶろくを打ち、独特の味をした飯をつくるようになったとか。やがて、この「どぶろくめし」が名物になり、なまって「どどめせ」として広く親しまれ、その後全国に名高い「備前ばら寿司」に姿を変えたといわれています。
どどめせは、その名前こそ忘れ去られたものの、ばら寿司に並ぶ煮込み寿司として、岡山県の地方の伝統料理の中で、めんめんと受け継がれてきました。そんな中、地元福岡の女性グループが復活させ、89年には岡山県主催の「健康づくり食生活の知恵フェステバル」で最高の「岡山の味賞」に選ばれています。
また、町内のイベントなどでは、長船味の研究会の皆さんが「どどめせ」を作り毎回好評を博していました。
一度食べたらくせになる味
一文字では、「いつでも食べられるところがあれば」との要望に応え、93年秋ごろからメニューに取り入れるべく研究を開始しました。
地元の女性グループからレシピをいただき、それをベースにしながら、より現代の味に近づけるべく試作を重ねました。一番苦労したのは、だしの味と、合わせ酢の味のバランスです。どちらかが出過ぎてもどどめせの独特の奥深い旨みは表現できません。
結局、だしを工夫することにより、うまくバランスを取り、「中世のロマンの味」を実現できました。そして、94年4月、初めて一文字の正式メニューとして、どどめせが登場しました。あれから20余年、今ではどぶろく特区の「岡山県美作市産どぶろく」も加え、「一度食べたらくせになる味」としてお客様に喜んでいただいています。
栄養バランスもよく、お年寄りの保存食としても最適です。
どどめせは、ふつうのちらし寿司で使う椎茸・さやえんどう・かんぴょう・錦糸たまごのほかに、炊き込みご飯で使用する里芋・タケノコ・ごぼう・にんじん・鳥肉・ちくわが入っています。
味付けは、ちらし寿司で使う合わせ酢のほか、どぶろくと日本酒と当店特製の天然だしで行っています。なお、米は、地元産の寿司米に最適なアケボノ米を100%使用しています。
このように、ひとつの料理の中に、たくさんの種類の品目を使っており、栄養バランスも優れた食品になっています。お子様からお年寄りまで、安心してお召し上がりいただけます。
96年1月からは、冷凍パックも開発し、遠方の方でもお買い求めできるようになっております。特に、お年寄りの保存食や、単身者の食事にと重宝していただいています。
ぜひ一度、ご賞味ください。