一文字のおはなし
当店『一文字』は岡山県瀬戸内市を流れる水量豊かな吉井川とその周辺の緑に囲まれた小さなうどん屋です。今をさかのぼる事30年前、当時ではまだ珍しかった『セルフ』という形式のうどん店に偶然であった父(初代店主)がその画期的なスタイルに心引かれ材木屋の社長から心機一転、食の世界へ飛び込みうどん職人としての新たな人生をスタートさせたのが始まりです。
店の名は地元備前福岡の刀工『福岡一文字』から取り『一文字』と名付けられこの地でセルフうどん屋としての第一歩を踏み出しました。その中で忘れてはならないのが私の母の存在で、開店に際して讃岐へうどん修行に赴き、お客様から「おいしい」という笑顔を頂くため力を尽くしやがては『一文字の名物おばさん』と呼ばれるまでに皆様に親しまれ、今なお続く当店の家庭的で温かな雰囲気を造り出し一文字を支え続けました。その当時、東京でサラリーマン生活をしていた私(現2代目店主)がこの店を引き継ぐ事になったのは、店の中心であったそんな母が病に倒れた事がきっかけだったのです。
父と母が築いてきた店を失いたくないという思いと、幼い頃を過ごした田舎での生活をもう一度やってみたいという思いでこの地に戻り、新しい店主として一文字の舵を握り今の一文字へと歩んできました。
現在、当店では気軽にお好きな具と合わせて楽しんで頂けるセルフうどんと、お客様の注文を受けてから打ち上げるしらさぎ小麦の一文字うどん、そして備前福岡の市で産まれ郷土料理にもなっている『どどめせ』を復活させ、それらを中心に提供させて頂いております。
20数年ぶりのふるさとでの暮らしの中で『地元に根ざした店作り』をポリシーとし、お客様と接し交流していく事で『一文字』はこの地に根付き皆様に親しまれるうどん屋へと成長していく事ができました。また他県からも多くのお客様にお見えになって頂いています。
8年前には、息子が店に入り、店長として3代目修行についています。これからさらに『一文字の味』を『地元の味』としてこの地と共に成長させていく事が一文字の大きな願いと目標であるのです。